2017.01.25

相続対策としての不動産経営

不動産経営というと、なんだか難しそうで、遠く離れたことのような印象を持たれる方が多いかと思います。しかし、親や身近な人が所有しているアパートやマンションなどの不動産を相続したり、賃貸しているというケースは意外と多く、突然自分がオーナーになることもあるのです。また、自分自身で先を見越して相続対策のために、アパートやマンションを購入することもあるでしょう。この特集ページでは2号に渡り、実際に不動産経営も行っておりその道のプロでいらっしゃる税理士の渡邊浩滋先生に不動産経営、相続についてお話を伺います。

マイナスからのスタート

 私が現在、不動産専門の税理士として活動するきっかけになったのは、もともと農家で地主だった実家の不動産経営に関わったのがはじまりです。当時、私はまだ27歳でした。 祖父が相続対策で借金をして、アパートを建てました。しかし、そのあと賃貸経営の管理運営がまったくできていなかった為、お金が回らなくなっていました。空室が目立つようになり、毎月の収入と支出を差し引きすると、なんと預金残高がゼロ円状態で借金の返済ができなくなってしまいました。もちろん修繕費の積み立てなどまったくありません。アパートを建てるときに、経営までよく考えるべきだったのです。
 不動産について未経験だった私は、まずはじめに本屋に並ぶ賃貸経営の本をすべて手当たり次第読み漁りました。そして経営を立て直すことにしたのです。

外観を重視してリフォーム

 不動産を賃貸する為に大事なのは第一印象。これが悪いとなかなか入居が決まりません。引き継ぎ時アパートは築20年、江戸川区域内で所有している物件は、全て駅から徒歩10分圏内ですが、付近は同じようなアパートばかり。どれも2~3部屋は空いているのがわかりました。そこでまず経営再建の第一歩として、空室対策と節税のための法人化を行い、リフォーム費用を借入れできるようにし、管理会社を変えました。女性用アパートにはオートロックなどのセキュリティを重視したり、外壁の塗り替えと防水工事を行いました。建物の外観は全体的に明るい感じにして、花壇やバラのアーチをつくり、季節になると黄色いバラのアーチが満開で、とても華やかで人目を引くようにしました。
ネットで物件の写真を並べたときには、見た瞬間、「これだ!」と興味を引かないといけないのです。こういった工事にはお金が掛かりますが、改装した後の反響は格段に上がりました。現在入居率は95%以上を維持しています。

不動産相続の善悪

 アパートや分譲マンションを相続する場合、ボロボロのアパートで嬉しいでしょうか。いざ引き受ける気持ちになったときに、子供だから遺産を引き継ぐのは当たり前ではなく、気持ちよく相続できる物件じゃないと引き継いでもらえない時代です。アパートは修繕積立金を自ら積み立てなければならないため、分譲マンションのほうが扱いやすいといえます。もらって嬉しくない物を貰うのは、後で問題になるんです。だから、古いアパートはきちんとリフォームするか、売って新しい分譲マンションを取得したほうがいいでしょう。
 30年以上たったアパートは建て替えるかどうかも、頭を悩ますところです。不動産経営は、建て替えに労力と費用がかかります。立ち退き、取り壊し、建築など実施するには、費用が多額になることも多く覚悟が必要です。本当に建て替えるべきかどうか、真剣に検討する必要がありますね。

後々続く相続のときの問題

 これは本当に多い問題で、アパートを相続する場合、例えば子どもが3人いると、どう分けるかが問題になります。相続時に共有にしておいても、絶対に後でもめます。それはまず管理の問題です。だれか1人だけが一生懸命やっていて、他の人は何もせずに持ち分を主張するのです。すると管理している人は、「私はこんな苦労しているのに」ということになります。だから分けたい、でも分けられないからお金で精算するしかない。ところが売却しようにも、1人でも反対するとどうしようもなくなってしまいます。
 つまり相続して共有にしておくと、あとで兄弟の仲が悪くなったり、あるいは次の世代、いとこ、配偶者が出てきたりします。そうなる前に遺言書を書いておくべきでしょう。しかし、どうしても分けられず、いずれ売却を考えるのであれば、分譲マンションの場合1人1戸など個別の区分所有で相続できるメリットがあります。

資産の組み替え

 アパートを持ち続けて、建て替えてもきびしい物件があります。それなら高く売れる間に売るほうが賢明です。もし建て替えるなら、それを「いつ売るか」という高く売れる時期を見極めるべきですね。
 アパートも分譲マンションも、賃貸経営という意味では、基本的に同じだと思いますが、マンションだと共用部分にはなかなか自分で手がつけられない、管理は自分の部屋の中だけという制約があります。
 それでも、分譲マンションは、場所を変えて持てるというメリットもあります。投資家の方からは、「地主っていいですね。土地があるから」と言われるのですが、私は逆だと思います。土地に執着しなくてもいい。場所を変えられる。投資家はそのメリットを生かせます。だから、いい場所に組み替えて持つということがとても大事ですね。

賢い相続対策を

 不動産経営で相続対策を行う場合は、ここに述べたような問題を頭に入れて、しっかりとした経営を行う必要があります。「相続対策だからそのときを凌げばいい」と思っていると、後々問題が生じます。相続する前も相続した後も、安定した経営を行うことが、結果として優れた相続対策になります。
 安定した不動産経営のためには、オーナーが経営者という意識をもって、リスクを知り、経営に関する収支を常に把握すること、自ら行動することが重要です。私の経験では、経営の立て直しには、新しく管理会社を変え、空室対策に役立つアドバイスをもらえたことも大きな要素でした。不動産経営での信頼できるパートナー選びが大切です。
 今回、アパートやマンションを相続する場合と、相続対策としてアパート経営や、分譲マンションの賃貸を考える場合という二つの視点から、私の経験をふまえてお話しいたしました。
 現在、私のような税理士、司法書士、弁護士、ファイナンシャルプランナーが集まって、MJ相続パートナーズというグループを組んでいます。不動産や相続に関して、より詳しいご相談は、明和住販流通センターを通じて、お申込みください。
(お問い合わせ:明和住販流通センター 0120ー583ー999)

渡邊浩滋
税理士、司法書士、税務調査士。
渡邊浩滋総合事務所代表。

渡邊浩滋総合事務所代表。大学卒業後総合商社に入社。法務部で契約管理、担保管理、債権回収などを担当。退職後、税理士試験に合格。実家のアパート経営(アパート5棟、全86室)を立て直し、税理士と大家の視点からアパート経営を支援するために活動中。税理士・司法書士のワンストップサービスを提供。資格専門学校講師経験もあり、講演、著書多数。

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